香味の記憶

自分の飲んでいたコーヒーの香味を求めて焙煎店を巡っているお客様がいます。
コーヒーを気に入って買っていたお店の店主さんがご病気になられ、急にそのコーヒーが飲めなくなったのだとか。
とくにこだわりなく飲んでいたつもりのコーヒーが急に飲めなくなり、他の店で近い香味のものを探し始めたものの見つからないというのです。探し始めて2年。うちのお店で25店目だと話してくださいました。

お客様の飲んでいたコーヒーはイタリアンブレンド。かなりの深煎りです。たくさんのお店を回られ、焦がさずに香味を引き出して深煎りに焼くには、焙煎士の腕が必要とお客様は感じられるそうです。

うちのお店は、お客様の求めている香味そのものではないものの、美味しいとおっしゃっていただけました。これからは、いくつかの深煎りコーヒーをご自分なりにブレンドしてみたいと数種類のコーヒーのご注文をいただいています。

味を覚えているうちに、なんとか見つけたいというお客様。香味の記憶を辿る旅は、とても素敵だなぁと思いました。

IKUKO